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日本顎関節症リハビリ研究室 /より安定した快適咬合を求めて

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I.咬合異常のガイド//2002日本補綴歯科学会

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川村歯科・かみ合わせ矯正歯科 in 仙台        //   顎関節症リハビリ //快適咬合を求めて

I.咬合異常のガイド//2002日本補綴歯科学会

日本補綴歯科学会 補綴誌46巻4号(2002)
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I. 咬合異常の診療ガイドライン
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●目次●
I. 咬合異常の診療ガイドライン
咬合異常とは……………………………………………………………………………… 1
1) 咬合異常の定義
2) 本ガイドラインで扱う「咬合異常」
咬合異常の病因・主要症候……………………………………………………… 1
1) 異常な咬合接触
2) 顎口腔系にみられる主要症候
咬合の検査………………………………………………………………………………… 4
1) 咬合の検査とは
2) 検査法
評価・診断………………………………………………………………………………… 6
1) 診断基準
2) 治療の到達目標
治療法………………………………………………………………………………………… 7
1) 咬合調整
2) 歯冠修復処置
治療後の評価法…………………………………………………………………………… 8
術後の管理………………………………………………………………………………… 8
文献………………………………………………………………………………………… 9



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咬合異常とは
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1) 咬合異常の定義
咬合異常は, 顎・顔面・歯・歯周組織などが遺伝的もしくは環境的原因により,その発育・形態・
機能に異常をきたし,咬合が正常でなくなった状態 ,また咬合は, 上下顎の解剖学的対向関係,顎関
節の構造と下顎の生理学的運動メカニズムに基づいて生じる歯と歯あるいは人工歯,または歯列相互間
の,静的・動的な咬合面あるいは切縁部の位置関係」と定義されている .
これらのことから,咬合異常とは,上下顎の歯の静的・動的な位置関係が正常でなくなった異常な状
態,
対向関係の異常(反対咬合,切端咬合,交叉咬合,過蓋咬合,開咬),
咬合位の異常(偏位,高位,低位),
咬合接触の異常(早期接触,咬頭干渉,非作業側接触,咬合接触の不 衡,咬合性外傷),
下顎運動の異常(咬合終末位の異常,咀嚼運動の異常,外傷性咬合,関節円板の障害),
咬合を構成する要素の異常(歯・骨・顎関節・神経・筋・口腔粘膜の疾患)などがあげられている .

・ 咬合異常」の類似語・関連語
咬合障害 , 咬頭干渉 , 咬合干渉 , 早期接触」などがあるが,これらは,咬合異常のなかで,
咬合接触の異常の範疇に入り,早期接触は,閉口時に,安定した上下顎の咬合接触状態が得られる前に
一部の歯だけが咬合接触する状態,咬頭干渉は,下顎の基本運動や機能運動に際して,運動路を妨げる
咬頭の接触またはその現象,咬合干渉は,早期接触と咬頭干渉を包括した正常な下顎運動を妨げるよう
な咬合接触をいい,咬合障害は,咬合干渉と同義語として用いられることもある.

(2) 本ガイドラインで扱う「咬合異常」
対向関係の異常が大きい場合には,主に歯科矯正的処置によって改善されるが,その他の多くの異常
に関しては,補綴処置によって改善される場合が多く,咬合異常と補綴処置との関連性は,きわめて高
いといえる.
本稿では,補綴臨床上,最も関連が深く,ほかの咬合異常への影響も大きい咬合接触の異常に焦点を
絞り,有歯顎者に限定し,解説する.

咬合異常の病因・主要症候
臨床的に認められる咬合異常は,“咬合接触の異常”と捉えることができる.これは上下顎の歯が接触する際,あるいは接触した状態で下顎を滑走運動させる際に生ずる咬合の不調和を示す.異常な咬合
接触は,1)早期接触,2)咬頭干渉,および3)無接触に分類され,顎口腔系に対して種々の影響を与
えることが報告されている(図).


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1) 異常な咬合接触
・ 早期接触
閉口によって上下顎の歯が接触する際,1歯ないし数歯のみが早期に接触する状態を示す.早期接触
を引き起こす原因としては,咬合面形態の不良,咬合平面の異常ならびに下顎運動制御の異常などが
えられる.咬合面形態の不良は,主として齲蝕,咬耗による歯質の欠損あるいは不適切な修復物などに
よって引き起こされる.また,咬合平面の異常は,主として歯周疾患,歯の喪失,歯列の乱れがその原
因と えられる.下顎運動制御の異常は,顎関節構造の形態・機能的異常あるいは関連筋群の異常と関
連して発現すると えられる.

・ 咬頭干渉
咬頭干渉は,下顎偏心位への滑走運動を行う際に円滑な下顎運動が障害される咬合接触状態を示す.
咬頭干渉を引き起こす原因としては,歯のガイドの不良(異常),歯の位置の不良(異常),咬合面の形
態の不良(異常)ならびに咬合平面の異常(不良)などが えられる.これらの状態は早期接触と同様
の原因によって発現すると えられる.

・ 無接触
該当歯に,対合歯との咬頭嵌合位における咬合接触が1点も認められないものをいう.本来負担すべ
き咬合力を負担していないことから咬合異常の一種として捉えることができる.今後の研究によって,
正常な生理的機能の達成のために最低限必要な咬合接触点数が明らかとなれば,咬合接触の病的欠如状
態の定義もさらに詳細に決定されるようになると えられる.





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2) 顎口腔系にみられる主要症候
・ 歯根膜にみられる変化
早期接触ならびに咬頭干渉などによって,歯に加わった咬合力が歯周組織の負担能力を越えると外傷

図咬合異常が及ぼす影響咬合異常(早期接触,咬頭干渉,無接触)
的な力として作用し,歯根膜腔に・線写真で観察できる程度の拡大を認めたり,歯の動揺を認めたりす
る場合がある.

・ 顎関節にみられる変化
咬合異常と顎関節の変化の関連についての報告は主に下記の2種に大別される.
a. 直接的影響
正常な顎口腔系においては,顎関節は上下顎の歯が安定して咬合することにより形態的にも,生理的
にも安定した状態下におかれると えられる.しかし,多数歯にわたる欠損や歯冠の崩壊,歯列の不
正,不良な補綴物などによって咬頭嵌合位の不正が生ずると,下顎骨が偏位することによって,顎関節も不安定な状態に導かれる.その結果,下顎頭と関節円板の位置関係に異常が発生したり,あるいは過大な力が下顎頭や関節円板および下顎窩に加わるため,関節の器質的変化を導いたりするとする報告もある.
b. 間接的影響
早期接触や咬頭干渉など咬合接触の異常が存在すると,咬合時の歯根膜受容器へ与えられる刺激が増大し,中枢神経系を介して間接的に咀嚼筋の活動性が亢進され,結果として,外側翼突筋などの筋スパズムを誘発し,下顎頭や関節円板の位置不正の原因となりうるとする報告もある

・ 筋(咀嚼筋)にみられる変化
筋の緊張が繰り返し生じたり長期間にわたって継続したりした場合,筋は疲労し,最終的には疼痛を
ともなった過緊張状態,すなわち筋スパズムに陥るとする報告もある.顎筋の筋スパズムと咬合異常の
関連についての報告は,主に筋に対する影響の違いによって,下記の2種に大別される.
a. 直接的影響
咬合状態が正常な顎口腔系においては,咀嚼筋は上下顎の歯が咬合することにより形態的・機能的に
安定した状態にある.しかし,多数歯にわたる欠損や歯冠の崩壊,歯列の不正,不良な補綴物などに
よって咬頭嵌合位の不正が生ずると,下顎骨が偏位するため咀嚼筋が直接的に伸展,あるいは短縮され,非生理的な状態に導かれる.その結果,たえず筋の過収縮を強いられることになり,この状態が続くと筋緊張が亢進し,筋スパズムヘと移行するとする報告もある.
b. 間接的影響
早期接触や咬頭干渉などの咬合異常の存在によって,歯根膜受容器への情報が変化し,中枢神経系を
介して間接的に咀嚼筋の活動性が亢進し ,その結果,筋スパズム状態に陥ることになるとする報告
もある.
・ 下顎位ならびに下顎運動にみられる変化
下顎位とは,上顎に対する下顎の三次元的位置関係を示し,顎関節と筋(咀嚼筋など)により決定さ
れるが,咬頭嵌合位は主に上下顎の歯列によって決定される.このため,咬頭嵌合位によって定まる下
顎位が顎関節や筋に影響を及ぼす可能性がある.したがって,不安定な咬頭嵌合位は,関連筋群や顎関
節の安定した機能に対して負の影響を与える可能性があると報告されている.
一方,下顎運動は咀嚼筋群を作動源とし,顎関節や歯に支えられた下顎骨の動きであり,中枢神経系
や顎口腔系に分布する感覚受容器からの信号によりコントロールされた運動である.したがって,咬合異常が存在すると,下顎運動にも変化が生ずることが報告されている .

・ 咀嚼ならびに嚥下にみられる変化
正常な咀嚼運動路は,前頭面投影像においては,一般に咀嚼側(作業側)へ張り出た咬頭嵌合位を起
始,終末点とした類楕円形のなめらかな曲線路を示す.また,咀嚼運動中期においては各ストロークの
運動路は安定し,咀嚼の終末位が咬頭嵌合位の1点に収束したリズミカルな運動となる.しかし,顎口
腔系に何らかの異常が存在すると,その咀嚼運動路はさまざまに歪んだものとなり,咀嚼運動リズムに
も乱れを生ずることが報告されている.


・ 中枢神経系にみられる変化
中枢神経系の変化と咬合異常の関連については,顎口腔系(咀嚼筋,顎関節や歯)に分布する感覚受
容器からのインパルスの異常が報告されている .この変化は,正常な顎口腔機能系の生理的な反応を
障害し,咀嚼筋の緊張亢進を生じ,その結果として下顎の変位が引き起こされるものと えられてい
る .
・ 姿勢,首,肩,腰にみられる変化
咬合異常は,頭頸部筋群のバランスを崩すのみならず,全身のバランスにも大きく影響し,体幹の不正,肩,腕,腰などの疼痛および運動障害などが惹起されるとする報告もみられる .
また逆に,種々の下顎位(下顎安静位,習慣性閉口運動終末位,筋肉位など)は姿勢(頭位)の影響を受け多少変動することが知られている.
・ 眼,耳,鼻にみられる変化
咬合異常に起因する異常としては,めまい,視覚障害,嘔吐感,鼻閉感,呼吸困難などが報告されて
いる .
・ その他
上記以外についても,咬合異常と種々の愁訴に関連した報告が行われている .



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咬合の検査
1) 咬合の検査とは
咬合接触状態の検査に先立ち,上下歯列の位置関係と前歯部の被蓋関係を調べる.
上下歯列の位置関係:反対咬合,切端咬合,交叉咬合,過蓋咬合,開咬
前歯部の被蓋関係:オーバーバイトとオーバージェット
咬合接触状態の検査は,早期接触,咬頭干渉,咬合接触の不 衡,偏心滑走運動時の歯のガイドなど
から,咬合接触状態が正常であるか否かを調べる.この検査は,咬頭嵌合位と偏心咬合位で行うが,下
記の方法がある.
・ 前方,側方滑走運動を行わせ,運動をガイドする歯を視診する方法
・ 上顎歯列の唇・頬側歯面に指腹を軽くあてた状態で,タッピング運動を行わせ,歯の振動状態を
触診する方法
・ 咬合紙により歯面に咬合接触状態を印記して検査する方法
・ 印象材,咬合検査用ワックス,シリコーンブラックなどを用いて検査する方法
・ 咬合紙や引抜き試験用試験紙による引抜き試験で検査する方法
・ T-Scanやデンタルプレスケールによる咬合検査法
・ 触診,聴診,咬合音測定装置などによる咬合音検査法
・ 上下顎歯列模型を調節性咬合器に装着して検査する方法




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2) 検査法
・ 咬合紙検査法
薄紙やプラスチックフィルムの片面あるいは両面に色素やインクを固着させた数十μm の厚さのも
ので,短冊状(10~40μm)と馬蹄状(約60μm)などがある.この咬合紙を上下歯列間に介在して咬
合させることにより,咬頭嵌合位や偏心咬合位での咬合接触状態を観察する.その場合,咬合紙と歯面
にみられる色の濃淡を調べることにより,咬合接触の強さを評価することができる.また,色の異なる咬合紙を用いることにより,各種咬合位間における咬合接触状態の差異を検査できる.さらに,咬頭嵌合位から偏心位までの動的な咬合接触状態を調べることもできる.


・ ワックス検査法
咬合検査用ワックス(オクルーザルインディケーターワックスなど)の粘着面を下顎の咬合面に置
き,咬合させた際のワックスの穿孔部位を水溶性鉛筆でマーキングする.またワックスを口腔外に取り
出し,咬合接触部位を口腔外で観察することができる.ただし,シリコーンブラックに比べ,ある程度
の咬合力が必要であるため,咬合接触状態のわずかな差の判定は困難である.

・ 引抜き試験検査法
引抜き試験用試験紙を上下歯列間に介在させ,咬頭嵌合位や偏心位で咬合させ,1歯ずつの引き抜き
によって咬合接触部位や接触の強さなどを検査する.
試験紙が抵抗なく引き抜ける場合には咬合接触がないと判定する.この試験紙としては,厚さが
12.7μm で薄く,また破損しにくいことからArtus社製オクルーザルレジストレーションストリップ
スが一般に用いられている.

・ シリコーンブラック検査法
シリコーン印象材を下顎歯列上に置き,軽く咬合させ,硬化後口腔外に取り出し,透過光によって咬
合接触状態を検査する.
この方法では,わずかな咬合接触状態の差異を判定することができ,またカメラとコンピュータの併
用により,接触面積や上下顎歯の接触関係などを定量的に評価することも可能である.ただし,シリ
コーンブラックが硬化するまでの間,下顎位を保持する必要があり,また不安定な咬合状態ではその再
現性に問題が生じるため,複数回の記録をとり,一致するものを分析する.

・ 咬合接触圧検査法
a. T-Scan検査法
専用の感圧フィルムを上下歯列の間に介在して咬合させた際に,フィルム内の伝導性インク層が咬合
接触点の位置と圧力を感知する装置であり,咬合接触時間と咬合力を視覚的,定量的に評価することが
できる.咬合接触点と伝導性インク層の位置関係により,出力結果に差異が生じるものの,咬合接触状
態を定量的に評価できるという利点があるため,複数回の検査,あるいは咬合紙やシリコーンブラック
の併用により,臨床応用が可能である.

b. デンタルプレスケール検査法
専用の感圧フィルムを上下歯列の間に介在して咬合させた際に,フィルム内のマイクロカプセルが外
力の大きさに応じて破壊され,発色する装置であり,専用の解析装置にてその発色状態を読み取り,咬
合接触点の分布,咬合接触面積,咬合力などを視覚的,定量的に評価することができる.また,ワック
スタイプのシートを併用することにより,歯種ごとの評価も可能である.
ただし,ある程度の咬合力がないとマイクロカプセルが発色,感知できないため,T-Scanと同様に
咬合紙やシリコーンブラックの併用が望ましいとされている.

・ 咬合音検査法
咬合音検査装置は,咬合音を両側の眼窩下部あるいは頬骨弓部に設置したマイクロフォンや加速度
ピックアップで検出し,表示するものであり,デンタルサウンドチェッカーやスーパーチェカーなどが
ある.咬合状態が正常で安定している場合,短く,高く,澄んだ音が検出され,咬合干渉などにより咬
合状態が不安定な場合には,長く,低く,濁った音が検出される.

・ 模型咬合検査法
上顎模型を咬合器にフェイスボウで装着後,中心位,咬頭嵌合位,偏心位などのインターオクルーザ
ルレコードを用いて咬合器の調節と下顎模型の装着を行うことにより,上下歯列の関係を咬合器上に再
現し,異常の有無やその程度を検査する方法である.
閉口時の早期接触や偏心位での咬合接触状態を視覚的に観察でき,また口腔内では検査しにくい舌側
咬頭の接触関係,後方歯の咬合接触,臼歯部離開の程度などの観察も可能であるなどの利点がある.さ
らに,パントグラフ法を用いて全調節性咬合器を調節した場合は,口腔内の状態により近似させること
ができる.このように,多くの利点を有するが,模型やインターオクルーザルレコードなどの誤差や擬
似運動を再現する咬合器上の問題を 慮すると,口腔内で直接行う検査と併用することが望ましい.

・ 下顎運動検査法
上下顎の相対的な位置関係を下顎運動記録装置で測定した下顎運動データに三次元計測器で測定した
歯列模型の形態データを組み合わせることにより,任意の偏心位における咬合接触状態を再現・評価す
ることができる.



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評価・診断
1) 診断基準
正常な咬合接触状態には,下記の基準が求められる.
・ 咬頭嵌合位が顆頭安定位にあること
顆頭安定位:下顎頭が下顎窩のなかで緊張なく安定する位置

・ 咬頭嵌合位への閉口時に早期接触がなく,安定した咬合接触があること
a.閉口時に複数の歯が同時に接触する.
b.両側の咬合接触にバランスがある.
c.接触数は,片側4点以上が必要である.
d.弱いかみしめでの接触位置が強いかみしめでも変化しない.
付:咬合力の非対称性指数〔(R-L)/(R+L)×100〕は,9.3±6.7% であることが報告されて
いる .

・ 偏心滑走運動時に咬頭干渉がなく,適正なガイドがあること
a.作業側では犬歯あるいは犬歯と小臼歯での接触が望ましい.
b.非作業側では,弱い接触であれば問題ないが,作業側の接触がなくなるような強い接触は問題がある.
c.咬合小面は,上顎の犬歯舌側面や臼歯頬側咬頭内斜面の近心斜面(M型)が望ましい.

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2) 治療の到達目標
正常な咬合接触状態が変化し,早期接触や咬頭干渉が生じると咬合性外傷による歯周疾患,あるいは
咬合接触の不 衡や下顎位の異常となり,この状態が継続すると咀嚼系の機能が障害され,顎機能異常
を引き起こす可能性がある.したがって,咬合異常を訴えている場合には,正常な咬合接触状態に回復
させる必要があり,
・ 適正な咬頭嵌合位で,
・ 安定した咬合接触があり,
・ 偏心滑走運動時の適正なガイドがあることが治療の到達目標となる.
また,正常な咬合接触状態に回復させることにより,良好な咀嚼機能が営めるようになるといわれている.しかしながら,咬合接触状態の回復には咬合調整や咬合の再構成などの不可逆的治療を伴うこと,咬合接触状態の回復が新たな咬合異常を引き起こす可能性があることを 慮し,また,咬合異常があっても機能的には問題がない場合があることなどにも留意して,十分な検査の下,患者の承諾を得て行う必要がある.


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治療法
咬合治療には,咬合調整と歯冠修復の手法の2種が用いられる.これらのいずれの場合も適正な顎位
を指標として行われる必要があることはいうまでもない.

1) 咬合調整
咬合調整は,顎機能障害の治療や歯周病の治療において行われることがある.顎機能障害の治療に関
連した咬合調整については「顎機能障害の診療ガイドライン」を参 とされたい.歯周治療において
は,特定の歯にかかる外傷的咬合力を軽減させるためにも行われるが,この際にも顎口腔系全体の調和
を,配慮して行う必要がある.

2) 歯冠修復処置
歯冠修復処置では,その作製される修復物によって,まず上下顎の安定した咬頭嵌合位が与えられる
こと,さらに機能運動時において,上下歯列間での調和のとれた咬合接触が再現されることが必要であ
る.これらを達成する術式には以下のものがある.

・ 平均値咬合器を用いる方法
咬頭嵌合位での咬合接触を平 値咬合器などを用いて再現し,偏心位での咬合接触の最終調整を,口
腔内で行う方法である.しかし,調整に際しては多大な時間を費やすため,患者および術者の負担が大
きい.一般的には1~3歯の少数歯の修復が適応症といわれる.

・ 調節性咬合器を用いる方法
歯冠修復物作製において,咬合器上において下顎運動を再現し,咬頭嵌合位および偏心位に関わる咬
合接触を規定する方法で,この際用いる咬合器には,半調節性咬合器や全調節性咬合器があげられる.

a. 半調節性咬合器
矢状顆路角および側方顆路角に関する調節機構をもつ咬合器であり,機能的に重要な前方咬合位およ
び左右側方咬合位を咬合器上に再現し,蝋型形成の技工段階でこれらの下顎位における咬合接触をあら
かじめ設定しておく方法である.しかし,この咬合器においては顆路が直線として近似される.

b. 全調節性咬合器
調節性咬合器のうち,両側の矢状顆路および平衡側の側方顆路の調節機構に加え,運動量の小さい作
業側の側方顆路の調節機構をも備えた咬合器である.したがって,前方および左右側方咬合位,あるい
は前方および左右側方運動を経路までも含めて再現できる利点があるが,運動の記録,咬合器の調節が
複雑となる欠点を有する.

・ FGP(FunctionallyGeneratedPath)テクニックなどによる方法
この手法は,補綴対象歯に対する対合歯の機能的な滑走運動時における咬合面の動きを,口腔内で三
次元的にワックスまたは即時重合レジンに記録し,このワックスまたはレジン記録を模型にしたものを
利用して,機能的に調和した補綴物の咬合面を作ろうとするテクニックである.この方法の特徴は,複
雑な咬合器やフェイスボウなどを全く必要としない(FGP用咬器:Verticulator,Twin-StageOcculuder
を使用)などの利点があり,簡便でしかも正確度の高い方法である.ただし,この方法では,
安定した前方および左右側方運動のガイドのあることが前提条件となり,ガイドすべき犬歯や小臼歯が
補綴部位に含まれる場合には,暫間修復物などを用いて,順次ガイドを設定しなければならない.ま
た,この方法の改良法として使用されるものにDouble-castingMethod(2回鋳造法)もある .

・ 歯冠修復処置に用いられる材料
咬合治療を目的とする歯冠修復物の作製材料としては,従来から一般的に用いられてきた金属,なら
びに金属焼付ポーセレン,そのほかにキャスタブルセラミックなどがあげられる.また近年これらに加
えてCAD/CAM システムが登場した.これはコンピュータの応用技術であるCAD/CAM システム
(ComputerAidedDesign/ComputerAidedManufacturing)を歯科に応用したもので,すなわち作業
用模型上の支台歯の形態と対合歯,隣在歯の形態および相互の位置的関係を三次元的に計測し,コン
ピュータ上で修復物の形態データを設計し,そのデータをもとに修復材料を削りだして修復物を作製す
る方法である.この方法の利点としては機械作業により修復物を平 して高品質な状態に維持できる,
鋳造法では加工できなかった物理的特性の優れた材料(ハイブリッド・セラミックなど)を使用でき
る,などの点があげられる.

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治療後の評価法
咬合異常に関する治療後の評価については,術前の評価と何ら変わるところはなく,上述の評価法を
用いて評価される.特に治療後の評価においては,咬合異常の病態の項に示された症状・症候が,治療
後には消失あるいは軽減していることが期待されるため,術前の評価と対応する評価方法を用いて,術
前・術後の比較を行うことが望ましい.また,治療後の状態が長期に安定して認められることを確認す
ることが,治療後の評価においては重要となる.
術後の管理
咬合異常に対する何らかの治療を行った場合には,定期的なリコールが必要であることはもちろんで
あるが,特に機能的に何らかの問題が発生した場合には,詳細な検査・診断と術後治療(SPT)を再
度行う必要がある.

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文献
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2) 日本補綴歯科学会編.歯科補綴学専門用語集,東京:医歯薬出版,2001.
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